松田産業と共に「地球を美しく、人を豊かに」するパワー半導体

貴金属材料を使用して製造する半導体デバイスに、パワー半導体があります。
パワー半導体(電力用半導体素子)は、電流・電力を制御するために必要不可欠な半導体デバイスです。高電圧で大電流を扱うことができる特徴を持った半導体素子です。
その用途は、世界的なカーボンニュートラルの推進を背景とした自動車の電動化や太陽光発電などのエネルギー分野、AIの急成長によるデータセンターの増設によるサーバー電源制御などの情報通信機器分野で需要が急増しています。
IGBTやMOSFETに代表される各種パワー半導体には、松田産業が扱う各種接続材料や成膜材料が重要な部分に使用されています。
半導体とは
そもそも半導体とは、電気を通す「導体」と電気を通さない「不導体」の中間に位置し、外部からの条件によって「導体」にも「不導体」にもなる物質のことです。一般的には、その性質を応用し機能を持たせた素子のことを「半導体」と名付けています。
パワー半導体とは
半導体には、論理計算を行う「ロジック半導体」、記憶素子としての「メモリー半導体」、高い電圧・大きな電流を制御することができる「パワー半導体」があります。
「パワー半導体」の構造は他の半導体とは異なり、高圧・大電流にも耐えうる構造で作られています。ロジック半導体やメモリー半導体を人間の「脳」に例えるなら、パワー半導体は手や足を動かす「筋肉」に例えらます。
この半導体は単体ではディスクリート半導体(個別半導体)とも呼ばれ、単体でもモバイル機器の電源を制御に使用されますが、素子を多く組み込んだモジュールとしても製造され、電化製品・自動車・鉄道車両やロボットなどの産業機器には不可欠な半導体デバイスです。
その構造、ウエハ素材、素子の種類
素子を作りこむウエハの素材はSi(シリコン)が主流ですが、耐高電圧で電力変換効率に優れたSiC(シリコンカーバイド)ウエハの需要が拡大することが見込まれています。
また、GaN(窒化ガリウム)やGa2O3(酸化ガリウム)などの使用も開発が進められています。これらのウエハに不純物注入などの工程を経てP型、N型構造のトランジスタを作りこんでいきます。ロジック半導体などは電流を横方向に流す構造ですが、パワー半導体の多くは縦方向(ウエハの表から裏へ、裏から表へ)に流す構造になっています。
素子の種類には、バイポーラトランジスタを組合わせたスイッチングに用いるサイリスタや、スマホやパソコン電源などの比較的小電力を扱う部分に使用されるMOSFET(金属酸化膜電界効果トランジスタ)、大きな電力を扱うIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)があります。
注目されるパワー半導体の用途
パワー半導体は電流制御を行う全ての電子機器に使用されています。
モーターを制御する素子として身近なものでは、エアコンや冷蔵庫などに、そして電気自動車や新幹線車両にも搭載さています。
実はモーターが消費する電力は全世界の電量消費量の大半(およそ50%)を占めています。気候変動抑制の観点からも消費電力を抑えることが求められています。対策として、インバーターという電力制御を行うデバイスとしてパワー半導体は活躍しています。
また、今後ますます増加が見込まれるデータセンターの電力消費問題の解決や、太陽電池発電所など再生可能エネルギーの電力制御にも、パワー半導体が使用されています。
気候変動とパワー半導体
気候変動抑制へ「カーボンニュートラル」を掲げ、実現に向け世界が動き出している今、注目されている半導体デバイスがパワー半導体です。
機器を動かすモーターが消費する莫大な電力を削減する、あるいはグリーン電力に転換することが世界的課題となっています。
現在、世界で動いているモーターには電力を制御するインバーターといわれるパワー半導体で構成されたデバイスが使われていないものが多くあります。インバーターは電圧や周波数を変化させることにより、モーターの回転数を制御して無駄な電力を使わないようにする省エネ回路です。
また、グリーン電力を作り出す代表格である太陽光発電や風力発電には制御用のパワー半導体は欠かせません。そして、AIの普及によるデーターセンターにおける電力増加問題の解決にもパワー半導体は重要な役割を担っています。
パワー半導体の製造に使われる金属材料
ウエハ(表面)にトランジスタを作りこんでいく工程(前工程)で、電極材料としてアルミ合金やニッケルがスパッタリング法を主に用い薄膜を形成します。
(裏面)においては、良好なオーミック接合を得るために、アルミ合金やチタン薄膜を形成します。素子をダイボンディングする際にはんだとの強固な接合を得るためにニッケル薄膜が順次形成され、最表層にニッケルの酸化を防ぐために金や銀など貴金属の薄膜を形成します。
素子と外部電極を結ぶ工程(後工程)では、
裏面のダイボンディング材料として、はんだ接合を行い、より高耐圧素子の接合には貴金属ペーストを用いたシンタリング接合が用いられています。
表面電極と外部端子の結線には、ボンディングワイヤというアルミや銀、銅の細線が用いられます。この部分においても、大電流に耐えうる手法として、銅リボンでの接合やバンプめっきよる接合も行われています。
使用される材料がもつ課題
ウエハ前工程にて形成する際に、裏面最表層に使用される金属種は、金(Au)が多く使用されています。
しかしながら金は、その価格について、世界情勢、国際紛争など地政学的問題や主軸通貨ドルに対する米国の金利政策等の影響を受けて大きく変動する要因を常に抱えていますので、省金・脱金化への取り組みを常に意識しなければなりません。
金に代わるニッケル層の保護膜として機能を有し、低価格かつ価格変動幅の少ない材料が求められています。
また、組立工程である後工程で使用する材料では、高温環境に耐え低温接合が可能なダイボンディング材が、電極結線材料としては、大電流駆動に耐え得るアルミや銅ボンディングワイヤに代わる接合材料が求められています。
ニッケル/パラジウム/金めっきによる直接バンプ接合も解決の手段として普及が進んでいます。この場合にも材料価格の変動対策は課題です。
松田産業が扱うパワー半導体製造用金属材料
(前工程材料)
・貴金属スパッタリングターゲット
裏面成膜用の貴金属スパッタリングターゲットを提供します。このターゲットは良好な成膜特性を実現するために、結晶構造(粒径や配向性)が調整されています。
また、省金(Au)・脱金(Au)化への問題解決策として、合金(Au)・合銀(Ag)ターゲットなどの相談もお受けしております。
・その他スパッタリングターゲット
貴金属スパッタリングターゲットと共にTiやNi等のスパッタリングターゲットを一括で受注できる体制を有しております。
・UBMめっき用貴金属化合物
バンプめっき工程でめっき本液に貴金属を補充するための化合物を提供します。化合物としてオーロアシスト(亜硫酸金ナトリウム)、パラアシスト(ジクロロテトラアンミンパラジウム)があります。溶液タイプで使用しやすく、各社のめっき液に対応しています。
(後工程)
・各種ボンディングワイヤ
組立工程用の電極結線材料として、各種ボンディングワイヤを提供致します。
アルミボンディングワイヤ・銅ボンディングワイヤ(ベア銅及びPCC)・銀ボンディングワイヤ・金ボンディングワイヤ及び銅リボンです。
パワー半導体に使用する貴金属のライフサイクル
パワー半導体製造にかかわらず、貴金属材料の使用には、リサイクル(回収・精製)を常に行う準備をしておかなければなりません。
特に成膜工程で使用する真空成膜装置(スパッタリング装置・蒸着装置)のパーツに堆積した貴金属は、パーツの再生洗浄と合わせて除膜し回収します。使用済スパッタリングターゲットと共に回収・精製を行う「真空チャンバー内、貴金属ライフサイクル」の構築を行わなければなりません。
また、貴金属が除膜された真空装置パーツの洗浄度は製品の歩留まりに影響しますので、精密洗浄工程と言われるクリーンな環境での洗浄が必要です。
更に、成膜中にパーツから成膜材料が剥がれ落ち、装置内を汚染するという事象が発生する可能性があります。溶射加工などでのパーツの表面加工対策もオプションとして施行可能な業者を選定する必要があるでしょう。
回収した貴金属は、新たに使用するスパッタリングターゲットや蒸着材料の原料として使用され、製造原価の低減をもたらします。
バンプめっき工程における廃液等からの貴金属回収についても、水洗液も含めて回収し、めっき液へ補充する貴金属(AuやPd)化合物の原料にリサイクルすることを進めなければなりません。
回収・精製された貴金属を使用することは、鉱物資源保全や鉱山開発による環境影響の保全に必要なことであると共に、気候変動を抑制する半導体デバイスであるパワー半導体製造材料として、そのライフサイクルを構築することが求めれています。
半導体のテクノロジーをエコロジーで支援する松田産業の貴金属回収・精製
松田産業は、真空成膜装置(スパッタリング装置・蒸着装置)の部品に堆積した貴金属を除膜し、部品の洗浄再生と表面処理を行う精密洗浄専用工場を複数有し、スパッタリングターゲットの使用から始まる貴金属のライフサイクルのループをマネジメントします。
また、プレスパッタ等で発生するダミーウエハからも貴金属を回収し、要求に応じて、ウエハを再生洗浄することも可能です。
めっき液中の貴金属については、オンサイトで回収可能な装置の提案や廃液回収を通じて、貴金属化合物から始まるライフサイクルをマネジメントします。このようなエコロジーな価値提供を通じて半導体のテクノロジーを支援しています。
「めっき用陽極材」は、金めっきをはじめとしためっきプロセスにおいて、安定した電流供給を行うための素材です。陽極材の品質は、最終的なめっきの仕上がりや膜の耐久性に大きく影響を与えます。
たとえば、金めっきにおいて均一で高品質な膜を得るためには、適切な陽極材が必要です。不純物が少なく、めっき液に適合した素材であることが求められます。
まとめ
パワー半導体は、テクノロジーの進化と、環境保全の世界的な取り組みと共に、その用途は拡大しています。その生産には高機能な貴金属材料が必要であるゆえに、貴金属資源の保全も重要な課題となっています。気候変動に対する問題解決のためのキーデバイスとしてのパワー半導体、使用される材料にも同様に課題解決に向き合うことが求められます。その「解」を提供することはサプライヤーの責務です。
松田産業は、高機能な貴金属材料の開発と安定供給を担い、そしてアジア有数のリファイナーとして貴金属資源の保全のためのライフサイクルをマネジメントし、地球を美しくし人を豊かにするパワー半導体の生産を支援し続けてまいります。