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貴金属資源とリサイクルの重要性

貴金属資源とリサイクルの重要性

私たちが日常的に目にする貴金属といえば、その輝きに魅了され身に着ける、指輪やネックレスなどの宝飾品、そしてその多く使用される金(Gold)を思い浮かべる方が多いでしょう。「金」それは”永遠”の象徴として紀元前6000年という古代から人類を魅了し、宝飾品や工芸品、そして通貨として使用されてきました。
「金」の元素記号「Au」は、ラテン語で”太陽の輝き”を意味する「Aurum」に由来します。貴金属の代表格は「金」ですが、「銀」や「白金」もその仲間です。特に「白金」は近代、日本人に好まれた貴金属でもあります。
ここでは、産業界において欠かすことが不可避な”貴金属”を資源”と”リサイクル”という観点から掘り下げてまいります。

貴金属とは

貴金属とは、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の8種類の金属元素です。
その内、Pt・Pd・Rh・Ru・Os・Irの6種類の金属元素は白金族金属(Platinum Group Metal)として扱い、その略称はPGMです。

私たちは多くの電子機器を駆使して便利な日常を過ごしています。これらの電子機器には多くの半導体・電子部品が組み込まれており、それら部品類には金などの貴金属が導電素材として使用されています。排ガス浄化や化学・医薬品を製造する過程では貴金属の触媒機能が応用されています。なお、身に着けている宝飾品は直接目に触れる貴金属です。

貴金属の主な用途

 

金の市場と用途


新たに鉱山生産される金は、年間およそ3,600トンほどです。中国、オーストラリア、カナダが主要な産出国です。
二次供給、いわゆるリサイクルから供給される量として、主に宝飾品からのリサイクル量として、およそ1,400トンが加わります。

金の主な用途は、宝飾品でおよそ2,000トンで需要量のおよそ40%を占めます。現在国家戦略として注目されている半導体製造を含むテクノロジー系需要はおよそ350トン、その他、投資用・中央銀行やその他機関の購入需要が2,200トンほどあります。

工業用需要の内、電子工業用としては、およそ250トン(日本はおよそ80トン)です。これは主に半導体の後工程(組立工程)で使用される金ボンディングワイヤの製造に用いられる金量ですが、日鉄マイクロメタル株式会社が世界で初めて開発量産したPPCBWなどCu系ワイヤーへの代替が進んでおり減少傾向にあります。
その他エレクトロ二クス用途では、パワー半導体の裏面電極保護膜として、通信用途化合物半導体トランジスタの配線・電極に、水晶タイミングデバイスの励振電極に、通信機器に搭載されるSAWフィルターなどに、スパッタリングターゲット蒸着材料としても使用されています。

また、古くからめっき用にシアン化金カリウムや亜硫酸金ナトリウムなど金化合物として広く使用されています。
医療用としてがん治療にも使用されています。
なお、金は特に日本では歯科材用にも多く使用されてきましたが、セラミック系歯科材の保険適用を背景に年々減少しています。

銀の市場と用途

新たに鉱山生産される銀は、年間およそ26,200トンです。メキシコ、中国、ペルーが主要な産出国です。銀も二次供給(リサイクル供給)が年間5,600トンほどあります。

銀の用途は、金とは異なり産業用需要が大半を占めます。その量はおよそ年間18,000トンです。さらにその過半数を消費するのが電子機器用途で、電気伝導度や光反射率が高いという優れた機能性を持っているために使用されています。太陽発電パネルの電極にも銀は使用され、およそ5,000トンが消費されています。

昭和世代の方々は、写真の感光材料に多くの銀(ハロゲン化銀)が使用されていたことを思い出されるかもしれません。2000年には写真用におよそ6,600トンもの銀が消費されていました。1980年代に世界初のデジタルカメラが日本の企業から発表されました。当時、写真を現像する際に発生する定着液から銀を回収していた業者は、大きな衝撃を受けました。
そしてその後デジタルカメラの小型化や携帯電話のカメラ搭載機の普及などの影響を受け、その使用量は大幅に減少していきます。現在は年間約800トンの銀が使用されています。

なお、銀は宝飾用にも多く使用(約6,200トン)されています。また、金と同様に投資用にも多くの銀が用いられています。
地球環境の保全気運の高まりから、環境負荷の低いエネルギー源としての太陽光発電の需要は伸長しており、銀の需要増が見込まれています。曲がる太陽電池といわれるペロブスカイトにも貴金属は使用されています。

目立たない銀の使用先としては、紫外線反射用の建材ガラスや、銀の持つ特性を活用した抗菌材への用途もあります。
銀もめっき用途には銀化合物として使用されており、半導体用途では接続用の銀ボンディングワイヤや接合用銀ペーストに加工して使用されています。

白金の市場と用途

新たに鉱山生産される白金は、年間およそ180トンです。南アフリカ、ロシア、北米が主要な産出国です。
二次供給として、使用済み触媒などからおよそ年間40トンがリサイクルされています。

白金の用途も主に産業用です。自動車排ガス浄化用の触媒に45% ガラス生産用の器具に10%、化学工業・石油精製用の反応促進触媒に10%、温度測定器具など電子工業用途に3%、宝飾品用途に18%、ペースメーカーやカテーテル・歯科材料等の医療用途に3%、が消費されています。

今後は、水素のエネルギーとしての活用(水素電池など)への需要増が見込まれています。
また、同族のルテニウムと共に、ハードディスクの磁気記録用の成膜材料や先端半導体の配線材料としてスパッタリングターゲットやCVD用のプリカーサにも使用されています。

パラジウムの市場と用途

新たに鉱山生産されるパラジウムは、年間およそ200トンです。南アフリカ、ロシア、北米、中国が主な産出国です。
パラジウムは白金鉱山から産出しますが、ニッケル鉱山から副産物としても産出され精製されています。ロシア産のパラジウムは、ニッケル鉱山の副産物として産出されるため、ニッケルの生産状況や市場動向の影響を受けることがあります。二次供給としては、自動車排ガス浄化触媒を搭載した廃車からの回収精製を中心におよそ85トンがリサイクルされています。

パラジウムの主用途も銀や白金と同様に産業用途となります。主用途は自動車排ガス浄化触媒用に85%、化学工業・石油精製用触媒用途に5%、電子工業用途に5%消費されています。電子部品の材料用途としてのパラジウムは、かつて積層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極材として多く使用されていましたが、価格高騰や供給不安の懸念を契機にニッケルへの代替が進みました。
半導体用途では、はんだ濡れ性などの特性によりリードフレーム(半導体チップを搭載して外部回路基板と接合する。)のめっき用途としても使用が進みました。
なお、その他、宝飾品用途には1%が消費されています。かつて中国ではパラジウムの宝飾需要が大きく伸びました。

この金属の特徴として、パラジウムは産出地域が地政学的に不安定な地域に偏在しています。その影響により不安定な価格変動を繰り返してきました。

その他、白金族金属(PGM)の用途は、ロジウムについては約90%が自動車排ガス浄化触媒用途です。ルテニウムは約40%が化学工業・石油精製用触媒、約30%が電子工業用途に消費されています。イリジウムは、苛性ソーダ製造や水浄化など電気化学用途に多く使用されています。
酸化イリジウムをチタン基材にコーティングした電極は、従来の白金をコーティングした電極に比べ、ライフが長く電気めっき用の不溶性電極に広く使用されています。


貴金属リサイクルの重要性

貴金属は産業界にて欠かす事が出来ない用途に使用されています。
また、産出する地域が偏在しており、また、その地域が政治的やインフラ的に不安定な地域でもあり、常に供給には「不安定」という文字がクローズアップされます。

特に「金」は通貨的性質を持ち、基軸通貨である米ドル、広くは米国経済指標や経済政策による価格変動リスクを持ち合わせています。また、無国籍通貨として投資-投機需要に大きく影響を受ける側面もあります。それは、「金」が、有限の資源であることが認識されているからです。

迫る資源の枯渇

金は有史以来、20数万トン採掘されたと言われています。これはオリンピックなど公式水泳競技用のプール(50m×25m×3m)の約4杯分と、よく例えられます。小学校にあるプールでは、約28杯分、新幹線のぞみ車両700系では、約2編成分になるでしょうか。

金鉱山において産出し易く品位(純度)の高い部分は掘りつくされつつあります。推定されている埋蔵量(鉱床の内、経済的に採掘可能な部分)は、Metals Focusによる推定(2024年)では54,770トンです。このまま毎年同量を消費していくと近い将来に枯渇するという懸念を連想します。
今後、供給量を維持していくためには地中深く、低品位な地層から掘り出さなければならず(同様に資源量としては、132,110トンと推定)、そのために多くのコストを費やす必要があります。新たな鉱山開発は自然を破壊し、地球環境保全の潮流には相反する行為でもあります。
よって、「金」資源は、可能な限りリサイクルして使用することが求められています。幸いなことに、「金」は、環境安定性が非常に高く、その価値も高いために、比較的容易に抽出・分離・精製が可能なのです。
(と言っても、再使用するためには高度なノウハウが必要です。)

貴金属リサイクルの普及

主要な用途である宝飾品に関しては、嗜好品性質や退蔵用途しての活用もあり、個人の金庫やタンスに眠っているなど非流動的な資源でありますが、宝飾品を加工する業者の工程からは、貴金属リサイクル業者が限りなく回収する仕組みが構築済みです。

産業用途に使用される「金」は、各加工(化工)された形で半導体や電子部品の製造工程で使用されますが、製造工程から発生する端材は漏れなく回収されています。例を挙げると、
金ボンディングワイヤでは、ワイヤボンダー(ボンディング装置)から端線が集められて回収し、半導体の成膜装置からは装置部品に堆積した「金」が、部品の洗浄を伴い回収され、使用済みのスパッタリングターゲット、蒸着坩堝に残った「金」も回収されています。

また、金めっき工程では、水洗液や交換後のめっき本液もリサイクルに回されます。
めっき工程の側に回収装置を設置し、効率よく回収されています。
この場合、回収した「金」を精製し、再び製造に使用する材料として加工し使用するという”金ループビジネス(金循環取引)”を行うことが出来る貴金属会社を選定することにより、製造原価低減(リサイクル=コストダウン)を実現することが出来ます。

「金」が使用された宝飾品や半導体・電子部品は、いつかは使用済み品として売り戻されたり廃棄されることになります。宝飾品は市中の買取業者などを経由して貴金属業者で精錬精製され再び金地金や加工材として市場に戻されます。日本国内で循環すればよいのですが、精製費用の安価である国へ輸出されるケースも多く、貴金属資源保全の観点から懸念されています。

※松田産業が対応可能な主な貴金属回収・精製対象(鉱源)

貴金属鉱源例 半導体・電子部品 表面処理 化学
Au Ag Pt Pd Rh Ru
  • IC LSI等デバイス
  • チップ部品
  • ペーストウエス
  • 真空成膜装置治具
  • 蒸着・ターゲット材
  • 他電子材料 他
  • めっき廃液
  • スラッジ
  • ドラッグアウト液
  • 活性炭 樹脂
  • めっき部品
  • 回収装置 他
  • めっき治具
  • スタンプ屑
  • 切削屑
  • プリント基板
  • 端子コネクター
  • 触媒
  • 電極材料 他
感光材料 医療 宝飾 その他
Au Ag Pt Pd Rh Ru
  • 銀塩フィルム
  • 定着液
  • 回収装置 他
  • 歯科合金
  • 銀塩フィルム 他
  • 宝飾合金
  • バフ粉
  • 切削屑 他
  • 各種金属スクラップ
  • Cu/AI/Ti/42材 他
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貴金属回収・精製

まとめ

さて、電子機器に囲まれて生活や日々仕事を営む私たち、言い換えると「金」資源に常に接して生活しているといっても過言ではありません。
日本国内に電子機器等の形で蓄積されている(地上資源)は、独立行政法人物質・材料研究機構の推計によると金6,800トン、銀60,000トンです。
電子廃棄物からの「金」資源の回収については、先の東京オリンピックの金メダルの金めっき材料に回収されたスマホから抽出した「金」が使われたことで大いに話題になりました。
役目を終えた電子機器は再利用されるものもありますが、有価廃棄物として取引されずに廃棄されるものも多く、「金」資源としての認知を高めていく啓蒙活動もリサイクル業者に求められています。

以上、「金」の資源保全について中心に述べて来ましたが、他の貴金属、特に白金族金属(PGM)は「金」よりも希少性が高く、産業用用途比率が高いため、”ループビジネス(循環取引)”をの構築は必須となるでしょう。

また、「銀」は希少性や価格面で注目度はそれほど高くありませんが、産業界に欠かすことの出来ない重要な資源としてリサイクル率の向上に努めなければなりません。

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