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モバイル機器の進化に欠かせないIII-V族化合物半導体

モバイル機器の進化に欠かせないIII-V族化合物半導体

トランジスタやダイオードなど複数の半導体素子を、一つウエハ上に造り込んだマイクロ波集積回路(Monolithic Microwave Integrated Circui(MMIC))があります。 MMICは、スマホや移動通信基地局機器などにおいて、信号の増幅器などに使用されています。
MMICには一般的にGaAsなどのIII-V族化合物半導体が用いられます。
また、電界効果型トランジスタであるHEMT( High Electron Mobility Transistor 、高電子移動度トランジスタ)のような高周波トランジスタにも用いられています。これらの回路形成には、抵抗率の低い材料であり化学的に安定で、電極に用いれば良好なオーミック接続を有する「Au(Gold)」が広く使用されています。

III-V族化合物半導体とは

B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)やTl(タリウム)などが属する周期律表のⅢ属元素と、N(窒素)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)やBi(ビスマス)などが属するⅤ属元素間の化合物をIII-V族化合物と呼びます。

そして、この「III-V族化合物」を用いた半導体を「III-V族化合物半導体」と呼んでいます。III-V族化合物は大きなバンドギャップ(禁制帯という電子が存在出来ない領域)を持つ特徴があります。代表的なのがGaAs化合物半導体です。

応用されるデバイス

光るデバイスとして、LED(Light Emitting Diode(発光ダイオード))と半導体レーザーへの応用が歴史的に古く、また、高周波トランジスタやマイクロ波IC、高速・低雑音トランジスタなどに応用されて来た現代社会では重要な半導体デバイスです。

大まかな製造方法

マイクロ波集積回路(MMIC)を例にすると、化合物半導体上にトランジスタ・ダイオードなどを形成した後、配線層を形成します。この配線層には真空蒸着法やスパッタリング法・めっき手法を用いてAu(金)膜を成膜し、リストオフにより配線パターンを作ります。
そして裏面加工を行い素子が完成し、ダイシング、ダイボンディング、ワイヤボンディング工程を経てデバイスが完成します。

配線・電極材料としての「Au」

MMICの配線・電極材料には貴金属の「Au」が広く使用されています。
ゲート抵抗低減のために抵抗率の低い材料を用いることが重要であることと、良好なオーミック接合を得るためです。
「Au」は成膜後、半導体素子への影響を考慮して、ドライエッチングの手法を取らずにリストオフ手法でパターンを形成します。
リフトオフはフォトレジストと有機溶剤を使い配線成形をする方法です。エッジ部分などバリの発生が生じないエッチングが進むように工夫されています。
このような手法を用いるため、例えば「Au」を蒸着する工程においても精密に蒸着成膜を行う為の対策が必要です。

Au蒸着材に求められること

リフトオフ工程では成膜後の不要な部分はレジストのエッチングと共に除去されるので、成膜に用いられるAuは精密に蒸着しなければなりません。
Au蒸着膜に欠陥を及ぼす主な要因は、クルーシブル(蒸着源を入れるポケット、あるいは坩堝とも言う)内で溶解したAu蒸着源から発生する金粒の吹き出し現象(以下スピッティングという)です。
その原因は、Au蒸着材中に含まれるカーボンや蒸気圧がAuより低い元素の含有にあることなどの文献や記事が公開されています。
特に、含有されるカーボン起因については、スラグ状Au蒸着材の加工工程おいて、熔解時に使用する坩堝、伸線・切断工程では使用する潤滑剤に起因するとの解析結果について述べられています。
その解決策として、使用されるAu蒸着材は、高純度であることは必須であり、低含有カーボンへの対策も求められています。

Au成膜蒸着時のスピッティング現象低減対策

Auスピッティング現象低減対策としては、その純度が高純度であることが前提条件です。
主な要因とされるカーボンの含有を抑える対策としては以下の方法があります。

(蒸着材加工時)
・蒸着材の加工時、熔解工程においては、真空熔解法を用いる。更にゾーンメルトを行うことで効果が高められます。
・スラグ加工においては、加工時に水溶性の潤滑剤を使用することで加工後洗浄が容易になります
・その洗浄方法としては、強力な超音波洗浄や硫酸加水を用いることも効果が期待できます。
・機械加工を行わずに冷蔵庫の製氷機のように個別に鋳造成形する方法があります。
その他、各社独自の対策や工程の作りこみを行っています。

(蒸着時の対策)
・蒸着材をクルーシブルに入れてでEB(電子ビーム)で溶解する際に、クルーシブルは水冷して使用します。冷却により電子ビームのパワーが強まるのを抑えるためにライナーを用い方法があります。これは、EBパワーが強いと金粒の吹き出しが強まるからです。
・一方で、ライナーを使わず、溶解時のEBのスイングを行わずに蒸着源の表面を部分溶解してスピッティングを抑制する方法もあるようです。

(蒸着材外の対策)
真空蒸着装置のチャンバー部品を定期的にクリーニング(蒸着物の除膜と精密洗浄)を行いチャンバー内を常に清浄に保つことが必要です。

なぜ、カーボンがスピッティングの要因とされるのか?
それは、金蒸着材中にカーボンが存在すると、カーボンは金と比較し蒸発しづらく、軽いため、溶解した金の上面に浮きます。量が多いと蓋をするように覆うことから、金の蒸発を促進するためにEBのパワーを上げる必要性が生じます。EBパワーが上がることにより金粒の飛散が増加していくと考えられています。

スピッティングを抑制する秘策
スピッティングの抑制には秘策があります。その秘策とは、Ta(タンタル)を微量、溶解した蒸着源に投入する方法です。溶解したAu中のTaは蒸発せずに溶湯内に留まりカーボンゲッターとして挙動し、蒸発面からカーボンを除去してスピッティングを抑制します。ただし、濡れ性が高まるため、溶湯が溢れ出ることがありますので注意が必要です。

松田産業の蒸着材に関するソリューション

蒸着材について
松田産業は、MMICなど化合物半導体の回路形成のためのAu蒸着工程におけるスピッティング抑制を誠意研究してまいりました。
その結果、蒸着時のスピッティングを極限まで抑制することが可能な精密蒸着用蒸着材を提供することができます。
特にスラグ状で提供可能な金蒸着材メーカーは世界的にも少なく、使用中の材料の形状を変更することなく、高純度、高清浄度の蒸着材をお使い頂くことが可能です。

詳しくはこちらからお問合せ下さい。

なお、化合物半導体配線・電極形成以外の使用においても、スピッティング抑制材を使用することで、蒸着開始時のシャッター開口時までの溶かし込み安定化までの短縮や、真空を開放して行う蒸着源の浄化のためのふき取り作業を省くことが可能になります。

・クルーシブルライナーについて
クルーシブルライナー使用の際にも、最適な材質の提案や加工に関する相談をお受けしています。

・スターターソースについて
蒸着開始時の作業時間短縮のために、あらかじめクルーシブルのポケット形状に合致したインゴット状のスターターソースの使用が有効な手段です。スターターソースに関しても相談窓口を設けています。

また、蒸着装置のチャンバー部品の定期的なクリーニングも対策の一つと先に述べました。松田産業は、真空成膜装置内部品の精密洗浄工場を複数有しており、部品洗浄と堆積した貴金属の除膜精製の事業を展開しています。
蒸着法では製品基板よりもチャンバー装置部品に堆積する量が多く、Auなど貴金属を蒸着する装置では材料歩留まり管理の観点からも、部品洗浄と共に回収・精製を徹底することが求められます。

その他、化合物半導体素子製造に関するソリューション

化合物半導体素子素子製造工程では蒸着材として「Au」以外の貴金属、例えば「Pt」を使用することがあります。「Pt」についてもスピッティング抑制対策が必要です。松田産業では「Pt」についても抑制材の提供が可能です。
また、成膜工程では金めっき手法も使用する場合があります。松田産業は電解金めっき薬品貴金属化合物の提供及びめっき廃液中の金回収についてのソリューションを提供していますので、お問い合わせください。

まとめ

高周波や光半導体のような化合物半導体では、回路の配線や電極に成膜材料としてAuが使用されています。
真空蒸着装置を用い成膜後、リフトオフという手法を使って形成をします。その薄膜形成は繊細であることから精密蒸着という所以になっています。
その際に用いる蒸着材料についての品質要求は高く、特に、製造歩留まりに直結するスピッティング(蒸着源からの製品基板に到達する微細な金粒の飛散)が問題視されています。この現象を低減するための蒸着材の作りこみが材料メーカーに課せられた課題でもあります。松田産業が開発した精密蒸着材料は、この課題を解決します。

また、蒸着成膜と共に行われる金めっきによる成膜についても、その工程に対するソリューションを有していますので、化合物半導体素子の成膜工程を総合的に支援することが可能です。
また、各製造工程からは貴金属が廃棄されます。貴金属ライフサイクルを装置洗浄および貴金属回収・精製事業を通じて確実にマネジメントいたします。

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