松田産業株式会社
銀めっきは、その優れた電気伝導性と耐腐食性から、製造業において多岐にわたる用途で使用されています。
特に電子機器や機械部品において、安定した性能と長寿命を実現するために欠かせない加工技術の一つです。近年、日本国内では高機能化と環境対応型のめっき技術への需要が高まっており、業界全体がその動向に注目しています。この記事では、銀めっきの特性やその実用例を詳しく解説し、製造業における活用のヒントをお伝えします。
銀(Ag)は、元素記号Ag、原子番号47の化学元素です。銀めっきとは、基材の表面に銀を均一にコーティングする加工技術であり、その目的は主に電気的特性の向上、耐腐食性の強化、さらには装飾性の向上にあります。この技術は、製造業において幅広い分野で活用されており、特に電子機器や機械部品の性能向上と寿命延長において重要な役割を果たしています。
銀めっきは、製造業で幅広く活用されている理由の一つとして、その特性が挙げられます。以下では、特に注目すべき銀めっきの主要な特徴を詳しく解説します。
銀はすべての金属の中で最高レベルの電気伝導性を持っています。この特性により、銀めっきは電気接点や配線において重要な素材となります。例えば、電子機器の端子やコネクタ部品に銀めっきを施すことで、電気抵抗を低減し、効率的な電流の流れを実現します。また、その高い熱伝導性は、熱管理が求められる機器にも適用されています。優れた耐腐食性
銀は酸化に対して高い耐性を持つため、過酷な環境下でも性能を維持できます。これにより、湿度や化学物質にさらされる環境でも安定した機能を提供します。この特性は特に食品加工や医療機器分野での使用において重要視されています。
銀は美しい光沢を持つため、製品の装飾としても使われます。そのため、高級感が求められるジュエリーや銀食器にも使用されています。装飾的な用途では、耐久性と見た目の良さを兼ね備えた仕上げが可能です。
銀めっきは、その特性を活かしてさまざまな業界で幅広く利用されています。以下では、主要な用途について詳しく解説します。
電子機器業界では、銀めっきが高い電気伝導性と耐久性を持つことから、不可欠な素材として活用されています。
例えば、コネクタや端子など、電気信号のやり取りが重要な部品には銀めっきがよく施されます。この加工により、接触抵抗が低減し、安定した電流の流れを実現します。
また、銀めっきは電気的性能を向上させるだけでなく、デバイスの長寿命化にも寄与します。スマートフォン、パソコン、家電製品など、日常生活で使用されるほとんどの電子機器において、その重要性が増しています。
機械部品においては、銀めっきが摩擦を軽減し、耐摩耗性を向上させる特性が重宝されています。これは、精密な動作が求められるギアやベアリングなどの部品に特に有用です。また、銀の耐腐食性により、過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。
医療機器分野では、銀めっきの耐腐食性と抗菌性が評価され、衛生面で高い基準を求められる機器に使用されています。例えば、手術器具や医療用コネクタなど、信頼性が求められる場面での使用が広がっています。さらに、銀の安全性と加工性から、インプラントやカテーテルの部品としても注目されています。
銀めっきの性能を最大限に引き出すためには、加工技術が極めて重要です。ここでは、代表的な化学的めっき技術と最新の環境対応型プロセスについて詳しく解説します。
化学的めっき技術は、銀を溶液中でイオン化させ、基材の表面に均一に析出させる技術です。この技術は、電気を使用せずに行われる化学めっき(無電解めっき)と、電流を流して行う電解めっきの2種類に大別されます。
近年、環境負荷を軽減する新しいめっき技術が注目されています。これらの技術は、製造プロセスの持続可能性を向上させるために開発されました。
電力消費の最適化
電解めっきにおいては、プロセスを効率化することで電力消費を削減する新技術が開発されています。これにより、エネルギーコストの削減と環境負荷の軽減を両立させることが可能です。
持続可能な社会を実現することを目的にして、温室効果ガス排出量をゼロにする「脱炭素社会」の構築は非常に重要な取り組みとなっています。
脱炭素社会を実現するために電気自動車(EV)へのシフトなども積極的に進められており、国内では「2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を実現する」という方針が定められております。
EV普及率が高まっていくことは間違いありませんので、弊社でもEVシフトに対応する技術開発を積極的に実施しております。
そのような技術開発の一環として、充電インフラで使用されるコネクタなどをターゲットに、銀めっき薬品の開発を行いました。
弊社では2種類の銀めっき薬品を開発いたしました。
2種類の銀めっき薬品は以下のようなコンセプトで開発をしています。
①従来の硬質銀めっきで使用されているアンチモンは人体に有害であるため使用しないこと
②硬質銀めっきの課題であった軟化を抑制すること
※皮膜硬度が経時で変化(軟化)してしまう=長期間使用すると部品(コネクタ)の特性が悪化する
③高温環境下であっても良好な接触抵抗を維持すること
※部品によっては熱負荷がかかるものがある。熱負荷により接触抵抗(電気抵抗)が悪化すると場合によっては機能しなくなる
開発した2種類の銀めっき薬品は皮膜硬度に大きな違いがあります。
①アルゲンシグマVS
皮膜硬度Hv130程度の銀めっき皮膜が得られます。
皮膜純度は99.9%となり純銀めっきと同等の接触抵抗が得られるという特徴があります。
アルゲンシグマVSは高硬度の銀めっき皮膜ではありませんので、比較的抜き差しが少ない内装コネクタをターゲットに展開しています。
②アルゲンシグマVM
皮膜硬度Hv180程度の銀めっき皮膜が得られます。
こちらは皮膜純度99%となり、従来のアンチモン浴と同等の皮膜硬度となっております。高硬度の銀めっき皮膜が得られますので、耐摩耗性が要求される部品をターゲットに展開しています。
いずれの銀めっき薬品も冒頭でご説明した3つのコンセプトを満足しており、内装コネクタやEV充電インフラに適した製品となっています。
銀めっき技術は、幅広い用途で高い性能を発揮する一方で、いくつかの課題も抱えています。ここでは、課題に対する解決策と、銀めっき技術の将来的な方向性について解説します。
銀めっきの品質を安定させるためには、使用する陽極材の選定が重要です。均一なめっき層を形成するためには、高純度で均質な陽極材が求められます。
松田産業のめっき用陽極材は、化学的安定性と高い加工効率を兼ね備え、業界から高い評価を受けています。このような信頼性の高い製品を活用することで、めっきの品質を向上させるだけでなく、作業効率の改善やコスト削減も期待できます。
また、陽極材の効果を最大限に活用するためには、適切なめっき条件を維持することが重要です。電解液の管理や温度の最適化により、均一で高品質なめっきを得ることが可能です。
近年、環境保護への意識が高まり、製造業においても環境負荷を軽減する取り組みが求められています。銀めっきプロセスにおいては、使用する化学物質や廃液の処理が課題となっています。
銀めっきは、その卓越した電気伝導性、耐腐食性、そして装飾性から、多岐にわたる製造業の分野で欠かせない加工技術です。特に電子機器や機械部品、医療機器など、信頼性と高性能が求められる製品で大きな役割を果たしています。
また、環境規制への対応やコストパフォーマンスの向上といった課題にも、低毒性のめっき液の導入や廃液リサイクル技術、工程の効率化などを通じて対応が進んでいます。これにより、銀めっき技術はより持続可能で高品質な加工手法として進化を遂げています。
松田産業の銀めっき薬品アルゲンシグマシリーズは従来の硬質銀めっきで使用されているアンチモンは人体に有害であるため使用しておらず、”安定した銀めっき皮膜を得たい”というような市場要求にこたえることができる製品ですので、是非ご検討いただけますと幸いです。
また、松田産業のめっき用陽極材も、均一で耐久性の高いめっきを実現する際にはぜひご検討ください。
廃液リサイクルについても松田産業の廃酸・廃アルカリ・廃油の処理にて承れます。
気になる方は下記よりお問い合わせください。
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引き続き、お客様が使いやすく、優れた皮膜特性が得られるめっき薬品の提案を行ってまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。